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「ワキガ・多汗症」手術法①

●切除法
最も初期段階で行われた古典的な方法で、ワキ毛の生えている部分に沿って、皮膚を皮下組織ごと根こそぎ切り取ってしまうものです。汗とニオイの原因になる汗腺類を完全に除去するという治療の目的はしっかり果たすことができます。しかしながら、この術法には大きなデメリットがありました。まず切除範囲が広いために、脇の下に比較的大きな傷跡が残ります。ジグザグに切れ目を入れることで、少しでも傷跡を目立たなくする方法も試みられましたが、やはりノースリーブや水着を着るには勇気がいる程度の傷跡になる場合が多かったのです。

切除後の縫合には、残った皮膚を引き寄せることになるので、腋が引きつってしまい、人によっては腕の上げ下ろしに支障をきたしたり、血管や神経を圧迫することで、むくみや運動障害などの後遺症が現れたりすることもありました。切除範囲が広いということは、手術中の出血も多くなりますから、完治するまでに二週間の安静が必要でした。これらのリスクを考えると、そうそう気軽に受けられる方法とは言えません。現在はこんな乱暴な治療を行っている医療機関はないと思われます。とは言え、この切除法がもたらした問題点こそが、いまだに「ワキガ・多汗症の手術は後遺症がコワイ!」という印象を多くの方に植え付ける要因になってしまったように思われます。

●剪除法
脇の下に数センチの切れ目を入れて皮膚を裏返し、目視によってアポクリン汗腺を確認しながら切り取っていく方法を、勢除法または反転勢除法といいます。切除法のような皮膚を根こそぎ切り取るわけではないので、術後の引きつれなどは起こりにくいという長所があります。しかし、皮膚にメスを入れることに変わりはないので、傷跡や色素沈着が残ってしまうことは免れません。厳に寄るシワに合わせて切開するなど、工夫は凝らされてきましたが、傷跡をなくすことは不可能です。腋全体に分布しているアポクリン汗腺を全て除去するためには、それに応じて傷跡も大きくなり、出血量も多くなりました。よって術後の回復に時間がかかる場合もあります。

剪除法が抱えるもう一つの問題点は、ワキガは治せても、多汗症を治すのは困難だという点です。ワキガ体質の人は同時に多汗症の症状を持っていることがよくありますので、せっかく手術をするなら、同時に行いたいもの。ですが、多汗症を引き起こしているエクリン汗腺は、アポクリン汗腺よりも皮膚の浅い部分にあります。そのため、これを切除しようとすると、皮膚を薄く削ぎ落とすような極めて高度な技術が必要になり、下手をすると皮膚に穴を開けてしまう可能性もあります。同時に行うには、医師の熟練した高い技術が要求され、時間もかかることから、費用も割高に設定されることが多いようです。